この講で学習する内容
・当座借越とは?
・当座借越の仕訳例
・貸方残高とは?

前講で、「当座預金口座の預金残高」額まで、小切手が切れると言いました。

しかし、残高を確かめずに残高以上に小切手を切ってしまうこともありえます。そうすると、その小切手を受け取った取引先は、銀行で換金できずに、取引先からの信用を失い小切手取引できなくなることもありえます。こんな場合に備えて、取引銀行と「当座借越(かりこし)契約」という契約を結んでおくと、約束した一定額まで、残高を超えて小切手が切れます(つまり銀行への<借金>になります)。

例えば・・・

【例5-6】
7月8日、商品¥2,000を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。
なお、当座預金残高は¥1,500であったが、銀行と¥5,000を限度額とした当座借越契約を結んである。

【仕訳】

(借)仕 入 2,000

/(貸)当座預金 2,000

問題文にある「¥5,000を限度額とした当座借越契約」というのは「¥5,000までならマイナス残高(=借入状態)OK」という意味です。

本問では、当座預金残高¥1,500に対し、¥2,000当座預金を減らすと、残高がマイナス¥500になってしまいますが、当座借越契約により、マイナス¥5,000までならOKということで、仕訳上は通常どおり¥2,000当座預金を減らしています。

ただし、当座預金勘定では貸方の方が¥500大きい貸方残高(=負債)状態になっています。

もし期末(決算)時点で、当座預金勘定が貸方残高(借入)状態であったならば、その残高を「当座借越」勘定か「借入金」勘定(いずれも負債)に振り替えます。

(以前出題範囲であった「一勘定制」「二勘定制」については、2019年度から日商簿記3級検定の出題範囲から外れました。上記のように、期末時点で貸方残高であった場合のみ決算整理が必要ということです。)

ところで、上記のように当座預金に関する仕訳を仕訳帳さらに総勘定元帳の当座預金勘定に記帳すれば、いついくら増減して残高はいくらなのかは把握できますが、どの相手先にいくら小切手を振り出したのかなどといった内訳がわかりません。

そこで、こうした取引先ごとの細かい内容を、仕訳帳や総勘定元帳とは別に、「当座預金出納帳」という補助簿に記帳して管理します。

補助簿については、他の補助簿と合わせて、後で補助簿のセクションでまとめて学習しても構いませんが、当座預金や当座借越のしくみを理解したところで、いま、やっておくことをおすすめします。

▶▶▶「当座預金出納帳のつけ方、読み方」の講へ

当座借越のまとめ
・当座借越とは、当座預金残高がマイナスの状態(=銀行に対する借金)になること
・貸方残高とは、借方合計よりも貸方合計の方が大きい状態をいい、当座預金など資産の勘定は基本的に借方残高になるが、当座借越契約を結んでいる場合の当座預金勘定は、貸方残高になることがある。意味としては、貸方の方が大きい=負債ということ。