【この講で学習する内容】 ・個人商店から株式会社へ対象が変わると、学習論点はどう影響するか? ・株式会社特有の会計処理の論点とは? ・実務に即した改定の内容とは? |
日商簿記検定3級試験を実施する日本商工会議所において、2019年度(2019年6月実施第152回日商簿記検定3級本試験)から、出題範囲の改定がなされます。
(リンク:日本商工会議所「平成31年(2019年)度以降の簿記検定試験出題区分表の改定等について」)
ここでは、2019年度からの試験範囲の改定の概要と、新試験範囲テーマのコンテンツへのリンクを提供します。
1.個人商店から株式会社へ
従来の日商簿記検定3級の対象は個人事業主による個人商店での簿記が中心でしたが、今回の改定により、小規模な株式会社を対象とした簿記会計に変更されています。それに伴い、引出金が対象から除外され、株式発行や繰越利益剰余金、利益準備金が新たに出題範囲に加わりました。
また、税金に関して、個人事業の場合の所得税から、株式会社の場合の法人税等に替わり、消費税についても税抜方式のみ日商簿記3級の出題範囲に加わりました。
【削除】引出金
【新規】株式会社とは、株式発行、増資、繰越利益剰余金と利益準備金(配当)、法人税等、消費税
2.株式会社の商習慣に即した改定
売買成立後に何らかの理由で価格を下方修正する「値引」は、実務上あまり発生しないということで、出題範囲から外れました。また、当座借越の二勘定制と一勘定制も出題されなくなり、当座借越は期末に決算整理事項という扱いになりました。
一方、商取引としてポピュラーになってきたクレジットカード決済や「でんさい」を新たな出題範囲とし、商品券も受け取り側だけの会計処理が3級の範囲とされました。
また、普通預金や当座預金に関して、複数の銀行口座を有する場合の銀行別預金勘定が新たに出題されることとなりました。
さらに、日商簿記3級が対象とする小規模株式会社ではレアな手形の裏書譲渡・割引に関しても、2級以上の出題となりました。
【削除】商品の値引、当座借越の二勘定制と一勘定制、手形の裏書譲渡・割引
【新規】クレジット売掛金、電子記録債権・債務、当座借越の決算整理、銀行別預金勘定
3.実務に即した改定
小規模株式会社ではあまり取り扱わない有価証券については、すべて2級以上となりました
従業員の社会保険料に関して、従来のように従業員負担分だけの処理(預り金)だけでなく、会社負担分(法定福利費)も出題範囲に加わりました。
固定資産の減価償却については、月次決算による処理も出題範囲に加わりました。
また、実務上よく使用される固定資産台帳について、補助簿に含めて出題範囲とし、証ひょうに関しては出題範囲に含まれることを明確にしました。
決算に関しては、消耗品費の期末未使用分の消耗品への振替に替えて、収入印紙や郵便切手の未使用分を貯蔵品に振り替える決算整理を出題範囲とし、さらに繰越試算表は出題から除外され、決算整理後残高試算表は出題範囲に加わりました。
【削除】有価証券、消耗品振替、繰越試算表
【新規】法定福利費、減価償却費の月次計上、固定資産台帳、証ひょう、貯蔵品棚卸、決算整理後残高試算表
【この講のまとめ】 ・対象が従来の個人商店から株式会社に移ったことで、引出金は論点から削除され、代わりに株式発行(増資含む)、配当(繰越利益剰余金・利益準備金)、法人税等が加わった。 ・さらに、株式会社の実務に即した論点として、クレジット売掛金・電子記録債権(債務)・法定福利費・固定資産台帳等が新たに出題範囲となった。 |