源泉徴収の仕訳

【例10-1】
従業員に本月分の給料¥10,000を現金で支払った。

【仕訳】

(借)給 料 10,000 (貸)現 金 10,000

この場合の「給料」勘定は、会社の立場から見るので、人件費として費用になります(収益じゃありません。念のため)。

【例10-2】
従業員に本月分の給料¥10,000を支払うにあたり、所得税¥1,000を差し引き、残額を現金で支払った。

ところで、通常は総額まるまる受け取れることは少なく、バイト代であっても何かしら引かれて支払われますよね。

【仕訳】

(借)給 料 10,000 (貸)(所 得 税)預 り 金  1,000

               現      金  9,000

天引きしても、会社が費用負担する「給料」勘定(借方)は総額で変わりありません(天引き前)。会社の人件費負担が安く済むわけではないからです。しかし、実際に貸方から従業員に支払われる現金は天引き後です。その差額(貸方)は、「預り金」といって、本人に代わって会社が税務署や年金事務所に支払うときまで預かっておく、という扱いになります。後で支払う義務になるので負債(貸方)です。

本来であれば、所得税の納税義務者(税金を納める義務を負う人)は、従業員個人ですが、源泉徴収制度では、本人に代わって会社が給料支給の際にあらかじめ天引きして会社が預かっておき(預り金)、納期までに本人に代わって会社が税務当局に納付する、という制度です。

納付の仕訳

【例10-3】
給料から差し引いておいた従業員の所得税¥1,000を税務署に現金で納付した。

【仕訳】

(借)(所得税)預り金 1,000 (貸)現 金 1,000

預り金を納付することで、負債を借方で消滅させます。

解ける!日商簿記3級本試験レベル問題演習

給料日に、従業員に対する給料から所得税の源泉徴収額¥20,000を差し引き、手取金¥180,000を当座預金口座から振り替えて従業員に支払った。

解答・解説はこちらへ(「スキマ時間で簿記3級問題演習編」へ

ところで、給料から天引きされる大きなものとして、今回の源泉所得税のほかに、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)があります。社会保険料については、次講で学習します。

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