繰延と見越は、落ち着いて考えないと、あせってどっちがどっちだかわからなくなるので、狙われます。
が、しかし、理屈や言葉の意味を落ち着いて考えれば、心配いりません。
要は、後へ延ばして計上するのか、見越して前倒しで計上するのか。

見越

前回の繰延とは逆の「見越」についてです。

何が逆かというと・・・

【設例】
12月31日、銀行から本年7月1日に借り入れた¥100,000に対する半年分の利息を現金で支払った。
なお、利率は年6%で、利払日は6月末日と12月末日である。(会計期間は4/1~3/31)。

【仕訳】
(借)支払利息 3,000
/(貸)現  金 3,000

「12月31日に銀行がやってるか?」
というツッコミもありましょうが、例題なのでご容赦ください。

さて、このまま3月末日に決算を迎えるわけですが、次の利払日は6月末なので、利息に関する勘定の残高は、この12月末の3,000円です。

7月から3月まで、9か月間借りているのに、「支払利息」は6か月分だけです。

その分逆に、次の利払日6月30日には、1~3月分の利息も合わせて支払います。

これでは、今年度の決算の損益が有利に計算され(9か月借りているのに、支払利息=費用は6か月分だけ)、逆に次年度の決算損益が不利に計算されます。

これではP/Lが本当の意味での営業成績を表していないことになります。

そこで、次年度の6月末に支払う予定の支払利息のうち、本年度に属する3か月分(1~3月分)を、実際にはまだ支払っていないのに、先に見越して、本年度の「支払利息」に計上してしまいます。

これを「見越」といいます。
(「支払利息」は費用なので、本設例は「費用の見越」になります。これも「決算整理」の手続の一つです。)

では、実際の会計処理はどうするのか?

まず、借方の支払利息勘定に、未だ実際には支払ってませんが、1~3月分を見越して上乗せします。

【決算整理仕訳】
(借)支払利息 1,500
/(貸)???? 1,500

では貸方は?

「未払利息」という負債の科目になります。
これは、「本年度の費用だけど未だ支払っておらず、次年度に支払う必要がある借り」ということで債務=負債になります。

(仕訳だけにらんでいると、支払利息と未払利息で、いったい支払ったんだか未払いなんだかわからない仕訳ですね。と分かりにくいので、検定試験でよく出題されます。)

こうすることで、本年度決算のP/Lには、既に支払済みの7~12月分の¥3,000に加え、1~3月分¥1,500を足した9か月分が、費用として計上され、「未払利息」はB/Sに負債として計上されます。

次に、本年度の決算が終わり、新年度になりました。

そうしたら、新年度すぐ(4/1)に、「未払利息」の繰越残高¥1,500を、「再振替仕訳」で逆仕訳します。。)

【期首再振替仕訳】
(借)未払利息 1,500
/(貸)支払利息 1,500

ちなみに、6/30に6か月分利息を支払ったときの仕訳は、

【仕訳】
(借)支払利息 3,000
/(貸)現  金 3,000

ですが、期首に貸方で支払利息¥1,500計上(つまりマイナス)しているので、結局3か月分の¥1,500の残高になります。

ところで、今の例で立場が逆になり、当店が銀行で、貸付金の利息を次年度に受け取る場合は、本年度に属する部分の収益(受取利息)を、まだ実際には受け取っていませんが、先に見越して当年度の収益として計上します。
その場合は「収益の見越」といいます。

【まとめ】
「見越」:費用(または収益)を後で支払い(受取り)、決算時に本年度分を本年度の費用(または収益)として先に計上してしまうこと

費用と収益の「繰延」と「見越」。
頭の中で整理して理解できましたか?

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